研究室概要

早川研究室は、高分子合成技術に立脚した機能性材料の開発を得意としています。様々な研究テーマに取り組んでいますが、その中でも特に力を入れているのが、ブロック共重合体の自己組織化を利用した、超微細加工技術や多孔質材料の開発です。分子間に働く比較的弱い相互作用、すなわち、水素結合、配位結合、ファンデルワールス力、親水・疎水的相互作用等を積極的に利用することにより、分子の配列や配向、結晶・液晶構造、相分離構造がナノスケールで自在に制御された多様で精密な高次構造を形成することができます。分子自身が本来有する潜在能力を最大限に活かすべく分子構造設計、精密重合、高次構造制御までを一貫して取り組むことにより、他に類を見ないテーラーメイド材料の開発に成功しています。

 
 

上記の説明が正直よく分からないと感じる皆さんも、難しく考えないで下さい!自分で設計・合成した化合物がかくも見事に自己組織化する様子を目にすれば、一瞬にして自己組織化材料の魅力に取り憑かれ、一緒に研究を行うことができます!

研究紹介

研究紹介1:High-χブロック共重合体の合成と次世代リソグラフィ

次世代半導体の超微細加工を実現

私たちの身の回りにあるコンピューターやスマートフォンなどの電化製品の小型化・高性能化は、半導体微細加工(リソグラフィ)技術の進展と密接に関わっています。そのため、より微細でよりキレイに(高解像度)微細加工ができる新しいリソグラフィ技術とその技術になくてはならない有機高分子材料の確立はきわめて重要です。しかしながら、現行の主なリソグラフィ法は、コスト・技術の両面から解像度の限界に近づいていることが指摘されています。そこで近年、新しいリソグラフィ技術として高分子ブロック共重合体の自己組織化によって出来上がる周期構造を利用する“ブロック共重合体リソグラフィ”に大きな関心が寄せられ始めています。ブロック共重合体は、互いに異なる分子構造のポリマーが末端で連結した高分子のため、分子鎖の長さレベルに相当するナノメートルスケール(およそ10~50 nmの範囲の周期長)の集合体(ドメイン)を自己的に形成します。これが、ミクロ相分離と呼ばれるブロック共重合体の自己組織化です。ミクロ相分離によって、球状(スフィア)、棒状(シリンダー)、板状(ラメラ)等、さまざまな形態のナノ構造がいとも簡単に形づくられます。このような特徴をもつブロック共重合体のナノ構造を半導体基板の上で作りあげた上で、微細加工に利用する技術がブロック共重合体リソグラフィと呼ばれるものです。我々は自ら分子設計し合成するブロック共重合体を用いて、世界最先端のシングルナノメートルサイズからなる超微細回路パターンの創生に取り組んでいます。

研究紹介2:絶縁性高熱伝導性エポキシ樹脂の開発

分子配列で高熱伝導を実現する高分子接着剤の開発

電子機器の高性能化に伴い、実装部品において発生する過剰な熱を効率良く取り除くことが非常に大きな課題として掲げられています。しかしながら機器内部で基板と半導体を接着する電気絶縁材料には、エポキシ樹脂が用いられており、その熱伝導率が0.1 - 0.2 W/m・K と非常に低いために熱放散のボトルネックとなっています。そこで私たちはこの問題を解決するために、エポキシ樹脂前駆体にメソゲン骨格を導入し、液晶性を付与することで高熱伝導性を示すエポキシ樹脂を開発することを目的として研究を行っています。

研究紹介3:ブロック共重合体のミクロ相分離を利用した多孔質材料の創生

研究紹介4:低誘電損失材料の開発

研究紹介5:深層学習とロボット技術を活用したマテリアルズ・インフォマティク

データサイエンスの観点から材料研究を推進するマテリアルズ・インフォマティクスは、新素材の創出を目指す方法論として注目されています。その中核となるのは、人工知能(AI)を含む計算技術を利用した材料の予測や提案、そしてロボットによる実験プロセスの制御です。ベテラン科学者のように、豊富な知識・高度な判断力・熟練した技術を持って化学研究を行うAIロボットを実現するために、大規模言語(基盤)モデルや深層学習、汎用または独自に構築した自動実験装置を組み合わせて、高分子合成などのシステムをゼロから構築しています。

生成AIの化学研究への適用可能性検証 東工大が実験の効率化や成功確率の向上へ
電波新聞 2023年11月17日 新聞・雑誌
東⼯⼤、「GPT-4」連動ロボで化学実験 研究に⽣成AI
日本経済新聞 2023年11月9日 新聞・雑誌
効果的な化学研究 AIがサポート
科学新聞 2023年11月7日 新聞・雑誌
「GPT-4」の化学知識 大学院レベルに相当
日刊工業新聞 2023年10月13日 新聞・雑誌

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